新たにスタート!
第二帖「帚木」より「雨夜品定」
十月 十四日(土) 十五日(日) 2023年 (第七十二回公演)
70回の会を重ねて語り終えた全五十四帖、そしてあらたに二巡目の旅が始まりました。
これまではノーカットでお届けしましたが、長くとも一回1時間強でおさまるように適宜省略(壮大な巻はこれまで通り何回かに分割)してお届けする全五十四帖連続語り会です。 どうぞ応援して下さいませ。
新たにスタート!
第七十一回 第一帖「桐壺」 八月 十九日(土) 二十日(日) 2023年
満員御礼
いときなき初元結ひに永き世を
契る心は結びこめつや
どの天子さんの御代のことでござりましたやろか
女御や更衣が大勢侍っといやした中に
そないに重い身分の方ではござりまへえで
それはそれはときめいといやす御方がござりました
「桐壺」の巻より
「桐壺」あらすじ
時の帝の寵愛ぶりが宮廷の秩序を乱すほどであったので、他の女御や更衣の妬みの的となってしまった桐壺更衣。玉のように光る皇子を生むも、心労が重なりやがて亡くなってしまう。
嘆き深い帝は遺された皇子を特別に愛する。高麗人などによる占いは並々ならぬものがあったが、後ろ盾のない皇子を東宮にすることはできず、臣籍に降下させることにする。光る源氏の君の誕生である。
源氏の君は元服し、左大臣家の一人娘である葵上と結婚するが、父帝が迎えた母桐壺更衣に瓜二つの藤壺の宮を後の母と慕ううち、その心はいつしか恋心へと変わり、一途に思慕するようになる。
第71回
第一帖「桐壺」
8月19日(土)月 20日(日)
【アトリエ第Q藝術】 Map
最寄り駅:成城学園前 (小田急線)
徒歩2分
両日 3時開演( 開場 2時30分)
終演後自由参加の茶話会があります。
御予約 3500円 当日4000円
お席には限りがありますのでお早めに御予約下さい
申し訳ございません。ご予約で満席になりました。ありがとうございます。
ありがとうございます。全五十四帖、やっと完読いたしました
宇治十帖 第五十四帖「夢浮橋」
第七十回 「夢浮橋」 六月 十七日(土) 十八日(日) 2023年
2009年から語りはじめ、途中コロナ禍でお休みを戴きましたが、この度ようやく全五十四帖を語り終えます。
これまで応援して下さったことに心から感謝をこめて「夢浮橋」を語ります。
法の師とたづぬる道を標にて
思はぬ山に踏みまどふかな
やり水にすだく螢だけを昔を思い出す慰めに
もの思いにふけっといやすと
はるか遠くの谷のみえる軒端から
たいそうたんと火をともし
ただならぬ火がみえるというので…
夢浮橋 あらすじ
薫大将は比叡 横川の僧都を訪ね、浮舟のことを問い質すと、僧都は驚き、宇治の院に倒れていた女君を妹尼が面倒を見ていることを話した。僧都は大将の深い情を知ると浮舟に戒を授けたことを申し訳なく思うが、小野に案内してほしいという大将の頼みには応えなかった。夜、京へ帰る大将の一行の松明を見た浮舟は、自身の心が騒ぐのを恐れ、阿弥陀仏を一心に念じた。
翌日、大将は面倒を見ている浮舟の弟小君を小野に遣わし、一方僧都は妹尼に事情を伝え、浮舟には大将のために還俗するようにとの文を送った。浮舟は小君を垣間見、懐かしみ、母への思いで涙が溢れた、しかし、小君に会うことを拒み、大将からの文を見せられるとそれを押し返し、泣き伏した。小君からの残念な報告を受け取った大将は落胆し、誰か別の男が浮舟を囲っているのではないかと訝しがるのだった。
いよいよ全五十四帖の幕が下ります。
今後の公演のご案内をメールにてお送り致します。こちらのフォームからご連絡先をお知らせ下さい。アドレスの登録をさせていただき、次回以降のご案内を差し上げます。
お申込、お問い合わせはこちらからどうぞ↓
以下は過去の記録です
第六十九回 「手習」後編 四月 十五日(土) 十六日(日) 2023年
尼衣変はれる身にやありし世の
形見に袖をかけて偲ばむ
薄い鈍色の綾の上衣に
その下には萱草色などのくすんだ色をきて
ひどうささやかで
姿態は美しう今風の目鼻立ちに
髪は五重の扇を広げたようにふさふさとして広がってます
手習 後編 あらすじ
浮舟は横川僧都に助けられ、尼君の介抱の甲斐あって秋には回復したが、初瀬詣りの誘いも辞退し、言い寄る中将からも逃れて引き籠もっている折、庵に立ち寄った僧都に懇願して受戒する。念願の出家を果たした浮舟は、心を静めるためにひたすら手習いに勤しむ。
横川僧都は、宇治で助けた女人が出家に至った?末を明石中宮に語る。側近くにいた小宰相もその女人が浮舟だと察する。浮舟を諦めきれない中将は、浮舟の尼姿を垣間見てその美しさに驚き、出家させたことが自分の責任であるかのように悔しく残念に思う。
年が明け、庵を訪れた紀伊守が「薫大将が悲嘆に暮れながらも浮舟の一周忌法要を営むことになった」と話すのを漏れ聞いた浮舟は、その供養のための装束を仕立ててほしいと持ち込まれた布が自身の一周忌法要のためのものだと思うと感慨にふけるが、ひたすら過去との縁を絶とうと努める。一方、僧都が話した宇治での出来事を小宰相から聞いた大将は、心を乱しながら僧都のもとを訪れるのだった。
第六十八回 「手習」前編 二月 十八日(土) 十九日(日) 2023年
我かくて憂き世の中にめぐるとも
誰れかは知らむ月の都に
さあ、その琴(きん)の琴をお弾きやす。
横笛は月にはようあうもんどす。
どうしたのえ、皆 琴をとってきなされ
手習 前編 あらすじ
大将が通っていた宇治八の宮の姫(浮舟)が急に亡くなったことは世間の噂にものぼっていた。
高僧 横川の僧都は、母の尼君と妹尼が長谷寺参詣中に体調を崩し宿を取った宇治の院で、木の下にうずくまり泣いている若い女を見付け、助けた。妹尼は、初瀬の観音様が亡き娘の生まれ変わりとして授けてくださったと喜び、小野にある庵で手厚く看病する。その女は入水したはずの浮舟であった。僧都の祈祷により憑いていた物の怪が退散し、朦朧とした意識が回復しても、浮舟は生きる気力をすっかり失い身元も決して明かさない。
妹尼が亡くした娘には中将という婿がおり、僧都の弟子でもあった。中将は小野の義母を見舞った折にちらと垣間見た浮舟の見事な黒髪が忘れられず懸想するが、浮舟は歌すらも決して返さず、勤行に励み、出家への思いを強くしてゆく。
第六十七回 「蜻蛉」後編 十二月 十三日(火) 十四日(水) 2022年
ありとみて手にはとられず見ればまた
ゆくへも知らず消えしかげらふ
昔のあの御方がおいやしたら
どんなことがあろうと
ほかの女(しと)に心を分けたりしようか
蜻蛉 前編 あらすじ
浮舟の姿が見えないので、
匂宮は浮舟の死を不審に思い、側近の時方を遣わし探らせた。
匂宮は、
第六十六回 「蜻蛉」前編 十月二十二日(土) 二十三日(日) 2022年
我もまた憂きふる里を荒れはてば
誰れ宿り木の蔭をしのばむ
わたしがこないなとこに放っておかなんだら・・・
そこまで深い谷に身を投げたりは
せなんだやろ
蜻蛉 前編 あらすじ
浮舟の姿が見えないので、
匂宮は浮舟の死を不審に思い、側近の時方を遣わし探らせた。
匂宮は、
第六十五回 「浮舟」その三 八月六日(土) 七日(日) 2022年
鐘の音の絶ゆるひびきに音をそへて
わが世尽きぬと君に伝へよ
夜があけると
川の方をみて
屠所に引かれる羊よりも
死がそこにある気がするのどす。
(浮舟より)
浮舟その三 あらすじ
浮舟は薫大将と匂宮 二人の愛の板挟みで苦しみ、死を思う。一方薫は、両者の使者が浮舟の元で鉢合わせしたことから、ついに匂宮が人目を忍んで浮舟のもとに通っていることを知り衝撃を受ける。浮舟が物思いに耽っていた姿にも合点がいき、この裏切りを疎ましく思う。
薫からの文に戦いた浮舟は、右近と侍従からも、薫か匂宮かの選択を迫られ、更にこのような愛憎のもつれの顛末として不吉な例を聞くと、我が身ひとつ死ぬ覚悟をして匂宮からの文を処分するのだった。
薫は浮舟を京に迎え取るべく宇治の警備を強化、匂宮は浮舟からの返事がないことに苛立ち宇治にやって来、厳戒に阻まれる。退っ引きならない事態に追い込まれた浮舟は死を決意する。不吉な夢を見た母からの文に決別の歌を遺し、気遣う乳母の言葉を聞きながらその時を待つのだった。
コロナ禍の長い休止をくぐりぬけ、ようやくの再開です。
長く間が空きましたので、お聞き下さる方には、事前に 浮舟其の一、其の二 の
物語をさらっていただいた上でお聴きいただけるよう、動画提供などの工夫を致します。
これまでの物語をお聞きでない方もご安心下さい。
当日は30分の解説でこれまでのお話や背景をお聞き頂いた上で語ります。
4月25,26日〜2022年6月までの公演は、コロナ禍のため中止となりました。
皆様には大変ご迷惑をおかけいたしました。今後ともよろしくお願い申し上げます。
第六十四回 「浮舟」その二 二月十五日(土) 十六日(日) 2020年
はるかな向こう岸に
漕ぎはなれて行くように心細い気がして
つと添うて抱かれてるのも
たいそういじらしうお思いやす
「浮舟」より
浮舟 その二 あらすじ
匂宮は都に戻っても浮舟が忘れられず、情熱的な文を送り続けた。
二月、何も知らず悠長に構えていた薫は宇治に浮舟を訪ねた。浮舟は心奪われる匂宮の魅力と、言葉数は少ないが信頼のおけるであろう薫との間で苦悩する。その様子を女として成長したと誤解してしまう薫であった。
宮中での詩会で、浮舟に思いを馳せている薫の様子に焦った匂宮は、雪の夜に無理をおして宇治に赴き情熱の程を見せる。おののく浮舟を小舟に乗せて宇治川の小島の常磐木によそえて愛を誓い、対岸の小家で秘密の時間を過ごした。薫にまさる熱情をみせつけられた浮舟は、思い悩みながらも匂宮に一層魅了されてゆくのだった。
春雨の頃、浮舟は匂宮と薫からの文を手に板挟みの苦悩に苛まれる。薫は正妻女二の宮の了解を得て、浮舟を都に引き取ることを決めた。
宇治十帖の幕開きと共に、会場が「アトリエ第Q芸術」に変わりました。
キッド・アイラック・アート・ホール閉館に伴い、チーフディレクターであった早川誠司さんが、日本画家高山辰雄氏のかつてのアトリエを、総ての芸術活動の発信地として蘇生させました。
源氏物語のリトグラフでも知られる高山辰雄氏、御息女で作家の高山由紀子氏は「源氏物語 千年の謎」の著者、源氏の御縁に導かれたかのようです。
成城学園前からすぐという立地、芸術の香りたつ「アトリエ第Q芸術」から始まる宇治十帖の物語、終演後にはご要望の多かった皆様との茶話会で楽しく過ごせる空間となります。
皆様のお越しをお待ち申しあげます。
これまでの物語をお聞きでない方もご安心下さい。
30分の解説でこれまでのお話や背景をお聞き頂いた上で語ります。
2020年
2月 15(土)
16(日)
第64回
「浮舟」その二 第五十一帖
【アトリエ第Q藝術】 Map
最寄り駅:成城学園前 (小田急線)
両日 3時開演( 開場 2時30分)
御予約 3000円
当日 3500円
第六十三回 「浮舟」其の一 十二月十四日(土) 十五日(日)
心をば歎かざらまし命のみ 定めなき世と思はましかば
騒がれても今日だけはこうしていよう
どないなことも生きてる間の為にこそあるのや
今お帰りやすのはほんまに恋死にもしてしまいそうにお思いやす・
「浮舟」より
浮舟 その一 あらすじ
宇治十帖の幕開きと共に、会場が「アトリエ第Q芸術」に変わりました。
キッド・アイラック・アート・ホール閉館に伴い、チーフディレクターであった早川誠司さんが、日本画家高山辰雄氏のかつてのアトリエを、総ての芸術活動の発信地として蘇生させました。
源氏物語のリトグラフでも知られる高山辰雄氏、毎回その中から一作を展示していただいています。
御息女で作家の高山由紀子氏は「源氏物語 千年の謎」の著者、源氏の御縁に導かれたかのようです。
成城学園前からすぐという立地、芸術の香りたつ「アトリエ第Q芸術」から始まる宇治十帖の物語、終演後にはご要望の多かった皆様との茶話会で楽しく過ごせる空間となります。
皆様のお越しをお待ち申しあげます。
これまでの物語をお聞きでない方もご安心下さい。
30分の解説でこれまでのお話や背景をお聞き頂いた上で語ります。
終演後は楽しい交流会 茶話会で皆様と楽しい時間をどうぞ 自注参加です。
お問い合せ/お申し込み
*以下のフォームからお申し込み下さい
アドレスの登録をさせていただき、次回以降のご案内を差し上げます。
2019年
12月 14(土)
15(日)
第63回
「浮舟」その一 第五十一帖
【アトリエ第Q藝術】 Map
最寄り駅:成城学園前 (小田急線)
両日 3時開演( 開場 2時30分)
御予約 3000円
当日 3500円
第六十二回 「東屋」後編 十月十九日(土) 二十日(日)
2019年
10月 19(土)
20(日)
第62回
「東屋」後編 第五十帖
【アトリエ第Q藝術】 Map
最寄り駅:成城学園前 (小田急線)
両日 3時開演( 開場 2時30分)
御予約 3000円
当日 3500円
形見ぞと見るにつけては朝霧の 所せきまで濡るる袖かな
「東屋」より
東屋 後編 あらすじ
**********
今回は関西で活躍される手描き友禅作家 尾崎尚子さんの源氏物語作品を、アトリエ地下のギャラリーに展示
通常はその行程を分業する友禅染を、尾崎尚子さんは一人でこなし
作家ご本人も二日間お越しになるので、友禅の手法や行程など、興
友禅展示は1時から 19日は7時、20日は6時まで
語り会に不参加の方でも無料でご覧いただけます。
第六十一回 「東屋」前編 八月二十四日(土) 二十五日(日) 2019年
2019年
8月 24(土)
25(日)
第61回
「東屋」前編 第五十帖
【アトリエ第Q藝術】 Map
最寄り駅:成城学園前 (小田急線)
両日 3時開演( 開場 2時30分)
御予約 3000円
当日 3500円
見し人の形代ならば身に添へて 恋しき瀬々のなでものにせむ
「ものなどいう様子も
昔の姉君のご様子に不思議なほど似申しといることや。
あの人形(しとかた)を探しといやす御方に
お逢わせ申したいなぁ」
「東屋」より
東屋 前編 あらすじ
浮舟は、今は母(中将君)の再婚に伴い財力ある常陸介の継子となっていた。娘の良縁を願い、求婚者の中から選んだ左近少将は、浮舟が常陸介の継子と知ると財産目当てに実の娘に乗り替えてしまう。
失意の内に中君を頼って二条院の匂宮邸にやって来た中将君は、匂宮の御子を得た中君の生活を羨望、宮の美しさを絶賛する。一方、中君は、姉大君を亡くした悲しみと大君を忘れられないでいる薫の深い心のほどを語り聞かせる。中将君は、浮舟の身の振り方を中君に託そうと考えるようになる。
上品でおっとりした何かものを言う様子などは亡き大君にたいそうよく似ていると思った中君は、折しも来訪した薫に浮舟を勧める。薫はすぐさま心変わりできないものの心が揺らいでいる。薫を垣間見、その貴人らしい振る舞いに感嘆した中将君は、浮舟を中君に託して常陸へと帰っていく。
2019年
6月 22(土)
23(日)
第60回
「宿木」その三 第四十九帖
【アトリエ第Q藝術】 Map
最寄り駅:成城学園前 (小田急線)
両日 3時開演( 開場 2時30分)
御予約 3000円
当日 3500円
宿り木と思ひ出でずは木のもとの 旅寝もいかにさびしからまし
「今すぐにでも傍に寄って
この世に生きといやしたのやなぁというて
なぐさめたい・・・・。」
「宿木」より
宿木 その三 あらすじ
9月、薫は宇治の山荘を御堂に建て替える計画にかの地に赴き、中君から聞いた大君に似ているという従姉妹のことを老女弁に尋ねた。八宮との間に一子をもうけた中将の君という女房がいたが、出家願望の強かった八宮に遠ざけられ、都を離れていたのが二十年ぶりに上洛したのだと聞き、心逸る薫は弁に仲介を頼んだ。
年改まり二月、中君は男宮を出産した。大納言となった薫は、気が進まないままに女二宮との婚儀に臨んだ。結婚披露を兼ねた藤壺での花の宴の後、薫は女二宮を三条の宮に迎えた。
初夏、宇治に出かけた薫は、偶然にもこちらを訪ねていた例の従姉妹(浮舟)を垣間見すると、大君そのままの容姿に驚き、胸躍らせ、逢瀬の段取りを弁に依頼するのだった。
第五十九回 「宿木」その二 四月二十日(土) 二十一日(日) 2019年
2019年
4月 20(土)
21(日)
第59回
「宿木」その二 第四十九帖
【アトリエ第Q藝術】 Map
最寄り駅:成城学園前 (小田急線)
両日 3時開演( 開場 2時30分)
御予約 3000円
当日 3500円
いたづらに分けつる道の露しげみ
昔おぼゆる秋の空かな
どういう風にしたら
はた目も見苦しうのう思いをとげることが
できるやろう
「宿木」より
宿木 その二 あらすじ
匂宮と六君との婚儀が盛大に執り行われると、空虚な思いに駆られた薫は召人の女房と一夜を共にする。一方、六君に魅せられた匂宮の夜離れを嘆く中君は、都に出てきたことを悔やみ、薫に手紙を送って宇治に帰る手立てを依頼する。薫は中君の許を訪れて懇ろに慰める。その匂いやかな風情に、中君は以前何事もなく一夜を過ごしたことがあったのを思い起こす。薫は宇治に帰りたいという中君の袖を捉えて御簾の内へ、添い臥して迫り中君を困惑させるが、身重であることを知り、この君を匂宮に勧めたことを悔むのだった。
二条院に戻った匂宮は、中君に薫の香りが染みついているのに気づき、二人の仲を疑う。薫からは衣料などこれまでと変わらぬ細やかな心遣いの品が届く。そこにある薫の恋慕の情に中君は苦しみ、亡き大君によく似ているという異母姉妹(浮舟)の存在を明かすが、そんな中君の心遣いに心がゆらぐばかりの薫であった。
第五十八回 「宿木」その一 二月二十三日(土) 二十四日(日) 2019年
2019年
2月 23(土)
24(日)
第58回
「宿木」その一 第四十九帖
【アトリエ第Q藝術】 Map
最寄り駅:成城学園前 (小田急線)
両日 3時開演( 開場 2時30分)
御予約 2500円
当日 3000円
第五十七回 「早蕨」 十二月十五日(土) 十六日(日) 2018年
山里の松の蔭にもかくばかり
身にしむ秋の風はなかりき
今すぐ じきに帰ってきまひょう
一人で月をお見やさんといとくれやす
心を残して行くので ほんまに辛い
「宿木」より
宿木 その一 あらすじ
帝は、薫を娘の婿にと考え、碁の勝負にことよせてそれとなく女二宮との縁談をもちかけたが、亡き大君を忘れられない薫はその気になれないでいる。
左大臣(夕霧)は帝の意向を耳にし、娘六君は匂宮にと明石中宮に願い出、匂宮はしぶしぶながら婚姻を決意する。年が改まり、薫も、帝の思し召しに背いてはと女二宮との婚姻を決意した。
匂宮は六君の婚儀が八月に決定したことを中君に言い出し難く、これを人伝に聞いた中君は、宇治を出て都に来たことを悔やみ、自身の懐妊を匂宮に知らせることも出来ずにいた。婚礼の日、左大臣邸からの迎えでやっと出かけた匂宮だったが、六君はなかなか好ましい姫であった。翌朝、六君からの後朝の使いに気付いた中君は、諦めの心境で故郷宇治の晩秋を侘びしく懐かしみ、この日も眠れぬ夜をあかすのだった。
2018年
12月 15(土)
16(日)
第57回
「早蕨」 第四十八帖
【アトリエ第Q藝術】 Map
最寄り駅:成城学園前
両日 3時開演( 開場 2時30分)
御予約 2500円
当日 3000円
見る人もあらしにまよふ山里に
昔おぼゆる花の香ぞする
風がさっと吹いて花の香りも客人(まろうと)の御匂いも
橘ではおへんけど 昔の人が思い出されるよすがどす。
「早蕨」より
早蕨 あらすじ
父宮に続いて姉君を喪った中君の悲嘆は尽きない。年が改まり喪が明けて、如月に匂宮が待つ都へ移ることが決まっても中君の心は重い。出立の前日に宇治に赴いて中君と対面した薫は、そのやつれた面差しが大君と重なって心が揺れるのだった。弁は尼となって宇治に残り別れを惜しんだ。二条院に着くと、待ちわびた匂宮は中君を紫上の居た対の屋に住まわせ、大切にもてなした。娘六の君と匂宮との結婚をもくろんでいた夕霧左大臣は心穏やかではない。
薫は三条の邸が完成したものの、大君の不在が虚しい。中君を匂宮に紹介したことを悔やみ、中君に心惹かれてゆく。匂宮は、二条院の桜を見に訪れた薫が中君と御簾越しに対面しているのを見て、薫の心を探りはじめるのだった。
第五十六回 「総角」其の三 十月十三日(土) 十四日(日) 2018年
2018年
10月 13(土)
14(日)
第56回
「総角」其の三 第四十七帖
【アトリエ第Q藝術】 Map
最寄り駅:成城学園前
両日 3時開演( 開場 2時30分)
御予約 2500円
当日 3000円
くれなゐに落つる涙もかひなきは
形見の色を染めぬなりけり
世の中をことさらに厭いはなれよと
勧めとくれやす仏などが
ほんまにこないな目におあわせやすのやろか
「総角」より
総角 其の三 あらすじ
薫は大君の病を聞き宇治に見舞う。大君は、妹中君と契りを結んだ匂宮に左大臣の六の君との縁談が進行していることを耳にして衝撃を受ける。都を出ることもままならないという匂宮からの文も、大君には逃げ口上のように映るのだった。
父八宮が成仏できずに嘆いているという阿闍梨の夢語りに、大君の病は重くなり、看護を尽くす薫に思いを打ち明け、中君の行く末を頼み、受戒も叶わないままに息を引き取った。薫は衝撃の余り宇治に籠もってしまう。喪服を着て弔うことも出来ない薫は、雪空に浮かぶ月に、大君への届かぬ思いを詠うのだった。
中君の悲嘆は深く、匂宮が万難を排して雪の中を弔問に駆けつけても決してうちとけようとしない。都に戻った匂宮から、中君を都に迎える決心を聞いた母中宮は、匂宮のあまりに深い思いに承諾せざるを得ないのだった。
第五十五回 「総角」其の二 八月二十五日(土) 二十六日(日) 2018年
2018年
8月 25(土)
26(日)
第55回
「総角」其の二 第四十七帖
【アトリエ第Q藝術】 Map
最寄り駅:成城学園前
両日 3時開演( 開場 2時30分)
御予約 2500円
当日 3000円
絶えせじのわがたのみにや宇治橋の
はるけきなかを待ちわたるべき
なまじい近うまで来て
素通りして帰っておしまいやしたのをひどい方とも
口惜しいとも思われるので
余計ものあわれな御様子でござります。
「総角」より
総角 其の二 あらすじ
妹中君の幸せを思い、自分に娶せようとする大君の心を知った薫は一計を案じ、八月末に匂宮を伴って宇治へ赴き、中君に引き合わせる。二人は結ばれたものの、案に相違して大君は薫に対してますます心を閉ざす。一方、匂宮は中君を愛おしく思うが、身分がら宇治通いがままならず、姫君姉妹が心を痛める中、九月十日にようやく薫と連れだって来訪した。
十月、匂宮は紅葉狩にことよせて宇治を訪れたが、母后が殿上人など大勢の者を差し向けて同行させたため、中君に逢えないまま京へ戻ることを余儀なくされた。匂宮は軽率な行動を窘められ、左大臣の六宮との縁談が強引に進められた。
大君は、匂宮が心変わりをしたのかと、また、父宮の遺言にそむいた上に妹君を不幸にしたと思いつめ、病の床につく。そして結婚拒否の思いも深まってゆくのだった。
第五十四回 「総角」其の一 六月十六日(土) 十七日(日) 2018年
2018年
6月 16(土)
17(日)
第54回
「総角」其の一 第四十七帖
【アトリエ第Q藝術】 Map
最寄り駅:成城学園前
両日 3時開演( 開場 2時30分)
御予約 2500円
当日 3000円
自分の気持とはかけ違うて
こないなあってはならぬことにも出会うもんやったのやと
無闇にもの悲しうて
川の音に涙が流れ添うような気がおしやす
「総角」より
総角 其の一 あらすじ
八月、薫中将は亡き八の宮一周忌の準備に心を砕いた。宮から後見を頼まれた二人の姫君の将来を考え、姉の大君に意中を訴えるが、軽々しく宮家の血を汚すなかれという父宮の教えを頑なに守る大君は、中君にだけは縁組みをと、自身の結婚など考えもしない。薫は老女弁にも相談を持ちかけ、ついに大君の寝所に押し入るが、大君は決して靡かず、何事もなく朝を迎える。
忌が明け、待ちかねて大君を訪ねた薫に、将来に不安を抱く女房達が手を貸そうとするので、大君は邸内でも気を許せず、弁の説得にも応じようとしない。薫は意を決し、姉妹の部屋に忍び込むも大君は脱出、残った中君と事なく一夜を語り明かす。
妹中君の幸せを思い、薫と中君を娶せようと考える大君の心を知った薫は、中君と匂宮を結婚させ、大君の心をこちらに向けようと一計を案じる。
第五十三回 「椎本」 四月十四日(土) 十五日(日) 2018年
2018年
4月 14(土)
15(日)
第53回
「椎本」 第四十六帖
【アトリエ第Q藝術】 Map
最寄り駅:成城学園前
両日 3時開演( 開場 2時30分)
御予約 2500円
当日 3000円
うちとけて というわけではおへんけど
前よりは少しは言葉も多う
ものなど仰せやす様子は
いかにも結構で奥ゆかしおす
「椎本」より
椎本(しいがもと) あらすじ
二月、八の宮の姫君に関心を寄せる匂宮は、宇治の夕霧の山荘に薫を訪ね管弦の遊びをした。楽の音は対岸の八の宮の耳にも届くのだった。
翌日、薫は八の宮を訪ね、その風雅な御様子に感じ入る。匂宮からは桜の枝を添えた姫君姉妹への文が届く。八の宮は中の君に返事を書かせつつ、姫君達の行く末を案じるのだった。
七月、八の宮は薫に姫君達の後見を託し入山、八月に亡くなる。薫は、法事など細やかに心を配る。匂宮も度々見舞いの文を送るが、姫君達は匂宮に心を閉ざしている。
忌が明け、姫君姉妹を見舞った薫は、几帳越しに感謝する大君のゆかしさに心引かれ、年末には恋する心を仄めかし、京に迎えたいと提案するのだった。匂宮は中の君に遠慮のない恋文を送り、そっけない返事に苛立っている。
年が改まり、夏、久しぶりに宇治を訪ねた薫は、障子の小さな穴から透き見をし、喪服姿の美しい姉妹につくづくと見入るのだった。
第五十二回 「橋姫」 二月十七日(土) 十八日(日) 2018年
2018年
2月 17(土)
18(日)
第52回
「橋姫」 第四十五帖
【アトリエ第Q藝術】 Map
最寄り駅:成城学園前
両日 3時開演( 開場 2時30分)
御予約 2500円
当日 3000円
「扇でのうても これででも
月は差し招くことはできるのでござりましたえ」
というて 月をお見やしたお顔はたいへん可愛らしうて
はんなりとうつくしいのでござります。
「橋姫」より
橋姫 あらすじ
源氏の異母弟の八の宮は世間から忘れられたように、宇治の山荘で二人の姫を養育しながら仏道修行に励んでいる。冷泉院に伺候する阿闍梨から八の宮のことを聞いた薫は、 俗身でありながら聖の心境を得られるものかと八の宮に憧れ、宇治に通うようになった。
三年が過ぎた晩秋、霧深い宇治を訪れた薫は、月の光の下に箏と琵琶を合奏する二人の姫君を垣間見、夢のような美しさに心奪われる。この時応対した老女房の弁が、ふいに涙ながらに、気になっていた自身の出生について仄めかすので薫は動揺する。弁は亡き柏木の乳母の娘であった。
帰京した薫が匂宮に宇治の姫君のことを話すと、宮はたちまち関心を持った。
冬になり、八の宮は姫達の行く末を薫に託した。その夜、弁から自分が柏木の子であることを知らされ、女三宮と柏木の交わした文が二十年の時を経て薫に手渡されたのだった。
第五十一回 「竹河」後編 十二月九日(土) 十日(日) 2017年
実のとこは態度にあらわして
少将のようにも悲しんだりはおしやさへなんだのどすけど
人柄が それでも痛ましうみえます。
「竹河」より
竹河 後編 あらすじ
卯月九日、玉鬘の娘大君は冷泉院に入内、寵愛を受けるが、蔵人少将は大君への思いを断ち切れないでいる。薫もまた、今なお大君を思っている。翌年の正月、男踏歌が行われ、薫は歌頭を務める。蔵人少将も楽人として踏歌に加わり、辛い思いで再び「竹河」を謡うが、簾中から大君が見ているのではと気が気でない。大君に女宮、次いで男御子が生まれると、すでに女宮をもうけている弘徽殿女御側からの風当たりが強くなる。帝も相変わらず大君の院入内に不満を漏らすので、玉鬘は帝の心を宥めようと、尚侍を辞して代わりに中君を出仕させる。心休まらない大君を案じて時折参内する玉鬘だが、いまだ消えやらぬ院の懸想がうっとうしく、冷泉院を避けている。
左大臣が亡くなり、夕霧が左大臣に、按察大納言は右大臣となる。薫は中納言に、蔵人少将は宰相に昇進する。玉鬘は、苦労知らずの境遇にある宰相をみるにつけ、後ろ盾のないわが子の昇進が遅いのを嘆く。
第五十回 『竹河』前編 十月十四日(土)十五日(日) 2017年
たいそう若うてなまめかしい様子で
身じろぎおしやす時に匂う香など
此の世のもんとも思えしまへん
「竹河」より
竹河 前編 あらすじ
髭黒の死後、その妻尚侍(玉鬘)は美しく成長した二人の娘(大君、中の君)に帝の求婚、冷泉院の所望に迷っている。夕霧右大臣の子息・蔵人少将も大君に懸想するが、玉鬘は源氏六条院の子息・薫君を好ましく思う。玉鬘から冷泉院の意向について相談された夕霧は、わが子に加勢したいものの、そのまま口をつぐんでしまった。
正月、薫、蔵人少将は玉鬘邸を訪れる。堅物との噂を払拭したい薫の弾く和琴の音は素晴らしい。酒宴では「竹河」が謡われ、蔵人少将は薫の人気を羨むのだった。
大君は華やかで気品があり、中君は優美で清らかな様子、庭の桜を巡って碁や歌で争っている。大君の姿を垣間見ては思いを募らせる蔵人少将は、母雲居雁にこの縁談を纏めるようせがむが、大君の冷泉院出仕が決まり、悲嘆に暮れる。
第四十九回 『匂兵部卿宮』『紅梅』八月十九日(土)二十日(日)2017年
色好みとして充分の
素質をもっといやす御様子やのに
無理に真面目ぶっといやすのも
おもしろみの少ないことやろう
(紅梅の巻より)
「匂兵部卿宮 」の巻 あらすじ
亡き源氏六条院を継承するほどの人物は見あたらないものの、今上帝の三宮(匂宮)と女三宮腹の若君(薫)の二人の若者は、「匂う兵部卿宮、薫る中将」ともてはやされている。匂宮は冷泉院の女一宮への思いを募らせているが、薫君は厭世の思い深く恋愛には消極的である。
「紅梅」の巻 あらすじ
故柏木の弟の紅梅(按察)大納言は、蛍兵部卿宮に先立たれた真木柱を後妻とし、その連れ子である宮の御方を実子同然に愛育するが、宮の御方は容易にうちとけない。先妻との間には大君(東宮妃)と中君の姉妹があり、大納言は中君を匂宮にと考え、庭の紅梅に歌を添えて匂宮に贈りその意中をほのめかすが、匂宮は宮の御方に心惹かれている。
母真木柱は、匂宮が宇治の八宮の姫などに執心しているなどの噂を聞くにつけ、その好色ぶりに躊躇せずにはいられない。
大空をかよふまぼろし
夢にだに見えこぬ魂のゆくへたづねよ
植えた人のおいやさん春とも知らず顔に
いつもの年より一段と匂うてるのは
心をうたれることどす。
(幻より)
「幻」の巻 あらすじ
年が明けても紫上を失った源氏(六条院)の哀しみが癒されることはなかった。女房達を相手に紫上を偲び、特に女三宮降嫁による苦悩を思いやり、自身の生涯を述懐、心弱さを人に見せまいと引きこもるのだった。
春になり、紫上が愛した桜を幼い匂宮が気遣う姿がいじらしい。女三宮、ついで明石の君を訪い出家の意向を述べ歌のみを交わす。
衣替えの頃となり、花散里から夏の衣裳と文が届き、葵祭を沈んだ心で過ごし、五月雨の宵には夕霧が父を見舞った。七夕が過ぎ八月には紫上の一周忌に曼荼羅供養を営み、菊の節句も虚しく雁の飛ぶ十月の空に紫上の行方を求めた。新嘗祭が済むと身辺の整理を始め、とってあった紫上の文に決別をした。師走の仏名会で杯を賜った導師は六条院の姿に涙を禁じ得ない。
明日は正月という日、歳暮の深い感慨を歌に託す六条院だった。
第四十七回 『御法』第四十帖 四月二十二日(土)二十三日(日)2017年
秋風にしばし留まらぬ露の世を
たれか草場の上とのみ見む
匂うようでおいやした盛りの頃は
この世の花の香りにもよそえられるようでおいやしたけど
かえって今は較べようものうて
上品で美しい御様子で
ひどう世をはかのうお思いになっといやす
(御法より)
「御法」の巻 あらすじ
紫上は、四年前に大病を患って以来ずっと病いがちの日を送ってい
夏、紫上を見舞った明石中宮に後事を託し、幼い匂宮には二条院の
野辺送りは八月十五日の明け方に行われたが、心乱れる源氏は出家
うらみわび胸あきがたき冬の夜に
また鎖しまさる関の岩かど
まじめな人が狂いはじめると
別人のようになってしまうときいてたけど
ほんまのことやった
(夕霧より)
「夕霧」の巻《その三》 あらすじ
夕霧大将は女二宮(落葉宮)の母一条御息所法要の後、世間には女二宮との結婚は御息所の遺言によるものと思わせて、一条宮に迎える準備にかかる。女二宮は失意のどん底にありながら、御息所の甥大和守や女房達に促され一条宮に帰着すると、大将はすでにあるじ顔で住んでおり、邸内は人の気配も多くて以前とは似ても似つかない。大将は小少将に手引きを求めて女二宮に近づこうとするが、女二宮は大将を拒んで塗籠に隠れて一夜を明かすのだった。
大将の母代わりの花散里は事情を聞くと、三条邸の正妻雲居雁に同情する。邸に戻った大将は雲居雁の嫉妬を宥めるのに言葉を尽くす。
大将は小少将を説得し、女二宮が籠城を続ける塗籠に入り込み、世の道理を説き、契りを交わした。こうなった今は女二宮も塗籠から出、新しく婿となった大将の存在が一条宮を活気づかせる。
一方、失意の雲居雁が子供達を連れて実家の大殿へ戻ったので、大将は説得に参じる。致仕大臣は世間体を考え娘をたしなめ、女二宮に文を遣わすのだった。
キッド・アイラック・アート・ホールでの最後の公演となりました。
いつとかは驚かすべき
開けぬ夜の夢さめてとかいひし一言
「昨夜でさえ
どないに思うてお明かしやしたやろう
今日も今まで文さえ差し上げんと」と
いいようもない気がおしやす
(夕霧より)
「夕霧」の巻《その二》 あらすじ
一条御息所は、娘女二宮(落葉宮)が夕霧大将と一夜を過ごしたと勘違いし大将に文を送ったが、読もうとする大将の背後から妻雲居の雁が文を奪ってしまう。釈明、抗弁も聞き入れられないまま、翌夕暮れになってやっと文を見つけ出した大将はその内容に愕然とする。すぐに文を遣わすが、その頃には悲嘆に暮れるあまり御息所の病状は悪化、急逝する。葬儀の準備中に急ぎ小野の山荘に女二宮を見舞った大将だが、悲しみの底にある女二宮は応対を拒む。大将は思いを残して小野を後にし、葬儀を盛大にと心尽くしの手配をした。
女二宮から文の返事がないままに、大将は決意を以て小野に赴く。小少将は取り次ぎに苦心、やはり頑なな態度を崩さない女二宮に、大将は傷心の思いで帰宅する。雲居の雁は夫の心変わりを悲しみ、噂を聞いた六条院源氏も心配し、大将の真意を探ろうとするが生真面目な返答があるのみだった。女二宮は出家を思い、紫上は女の処世の難しさをつくづくと思うのだった。
源氏の子息夕霧大将真面目一徹の不器用な恋は、山里を離れ都までに波紋を広げてゆくことになります。
山里のあはれを添ふる夕霧に
立ち出でむ空もなき心地して
「中空な有様やなあ。
帰る道はみえず 籬には霧がたちこめて
立ちどまることも出来んように追い払おうとおしやす。
恋になれぬ者はこないな目にあうのや。」
(夕霧より)
「夕霧」の巻《その一》 あらすじ
一条宮(女二宮/落葉宮)への思慕を募らせる夕霧大将は、折から物の怪に悩む母御息所が加持祈禱のために宮とともに移り住んだ小野の山荘を見舞い、霧立ちこめる夕暮れ時、山荘にとどまって宮に恋情を訴えた。しかし、夫柏木衛門督を亡くし、母の病に心痛が絶えない宮は固く心を閉ざし、大将は思いを遂げぬままに引き下がる。
翌日御息所は、祈祷に来ていた律師から、大将が明け方に戻ってゆく姿を見たと聞き、宮の浮き名が立つことを恐れ嘆く。宮と対面するも、自らの宿世の拙さにひしがれる宮は食事にも手をつけず、事情を聞き出すことができなかった。そこへ大将からの文が届く。御息所は二人の仲を許すかと心がかたむきかけたところであったが、今夜の訪れがないことを知ると悲嘆に暮れ、大将の不実に苦言の文を涙ながらにしたためるのだった。
源氏の子息夕霧大将 真面目一徹の不器用な恋は思わぬ波紋を広げてゆくことになります。
心もて草のやどりをいとへども
なほ鈴虫の声ぞふりせぬ
「月をみる宵はいつもものあはれでない折はおへんけど
今宵の新月の色をみてますと
ほんまに
この世の外のことにまで
さまざまに思いめぐらされます」
(鈴虫より)
「鈴虫」の巻 あらすじ
夏、尼となった女三宮の持仏開眼供養が行なわれた。念誦堂、自筆の経文など六条院源氏の心の入れ様は格別で、紫の上も心をあわせ、供養は盛大なものとなった。
秋、女三宮の住む六条院御殿の前庭を野に造って虫を放った源氏は、今更ながらの思いを訴えるが、かえって女三宮を困惑させる。二人は虫の音をききながら七絃琴を合奏し、鈴虫の歌を唱和するのだった。折からの月を賞でて螢兵部卿の宮はじめ殿上人達が来訪し、管絃の遊びが始まると、亡き衛門督が偲ばれた。そこへ冷泉院からお召しがあり、源氏は諸ともに冷泉院御所に参上、詩歌管絃に夜を明かした。
翌朝、源氏が秋好中宮のもとを訪れると、中宮の母御息所の罪障消滅を祈念する出家の意志を打ち明けられる。源氏は共感しながらも、中宮の願望を諫め、御息所の供養を勧めるのだった。
八年目をあゆみだします連続語り会、八月公演は「鈴虫」の巻。
ことばにならない思いが交錯し、哀切が深々と響き合う美しい巻です。
笛竹に吹き寄る風のことならば
末の世長きねに伝へなむ
「この人が生まれ出やすための約束ごとで
あのような思いもかけんことも起こったのやろう。
逃れられぬことやったのや。」
(横笛より)
「横笛」あらすじ
春、柏木衛門督の一周忌に人々は故人を偲び、源氏、夕霧は心を尽くして供養を営んだ。女三宮のもとを訪れた源氏は、その可憐な尼姿を今更に惜しみ、這い出して来た薫の若君が朱雀院から贈られた筍に無心にかじりつく姿をいとおしむ。気品溢れる薫君の成長を見るにつけ、自身の老いとこのような宿縁についてもの思う源氏であった。
夕霧は、衛門督がいまはの際に遺した言葉が心から離れない。秋になると一条宮を見舞い御息所に対面、衛門督の愛した和琴を弾く。女二宮と「想夫恋」をわずかに合奏し歌を交わし、意中を仄めかす。御息所から贈られた衛門督遺愛の横笛を手に御殿に戻ると、その夜の夢に衛門督が現れ、夕霧が笛を所有することに異議を唱えるのでその処置に窮する。夕霧は六条院に参上し、若君に衛門督の面影をみるがその考えを打ち消し、源氏に衛門督の夢と遺言を伝える。源氏は笛を預かるが、夕霧が真相に迫っていることを知る。
誰が世に種はまきしと人問はば
いかが岩根の松は答へむ
「女宮にも、とうとうお逢いやさずじまいで
泡の消え入るようにお亡くなりやした。」
(柏木より)
柏木 その二 あらすじ
柏木衛門督は見舞いに訪れた夕霧に病の真因を打ち明け、後事を頼むと、周囲の祈りの甲斐もなく亡くなった。正妻女二宮(落葉宮)とその母御息所はもとより、衛門督の父至仕大臣の嘆きは言いようもない。尼となった女三宮も、衛門督との宿縁に涙した。
三月、女三宮の生んだ若宮の五十日(いか)の祝が催されたが、尼宮と心通うべくもない六条院の心境は複雑で、若宮に面影を映した衛門督の早逝を惜しみ、尼宮の心中を察するのであった。
夕霧は世の中が悲しみに暮れる中、女二宮の実家一条宮を見舞い、心篤く御息所と故人を偲んだ。また、至仕大臣邸を訪ね唱和を以て哀悼した。以来、夕霧は一条宮を常に見舞い女二宮と歌を交わすうち宮への思いが深まり、一条宮の女房達も夕霧と女二宮の再縁に期待を寄せるようになる。